草月いけばな展「草月会所蔵コレクションにいける」(6月12日から17日)が無事終了しました。梅雨のうっとうしい時期ですが部屋に花を飾り、これから迎える暑い夏の前の、暫しの休息を楽しんでいます。
展覧会に出品するたびに、毎回のように物語が生まれ、必ず何か貴重なものを得ているような気がします。今回もそうでした。
三十数年前、亡き恩師の処に通っていた頃、一、二度お話ししたことのある先輩を今回の展覧会場で見かけました。懐かしさはあるのですが、記憶が定かでなく、どこで出会ったか名前もわからず、話しかける決定的な言葉もないまま、声をかけてしまいました。
(こんな経験、皆さんにはおありですか。)
いけばな作家 :草玉
陶芸作家 :中村 豊氏
(アリウム、ギガンジュウム)
一瞬その方は驚いた顔をしていましたが、じぃーっと私を見詰めました。
「千葉県の草玉さん?」 こわばった顔が崩れ、笑みがこぼれました。
その方は私の名前と住んでいる所まで覚えていらっしゃいました。
「100人以上いた生徒の中で、しっかり先生の教えを継いでくれた人がいたのね~、早速皆さんに話さなくては」と、先輩は喜んでくださいました。
恩師が先輩と再会できるきっかけを、導いてくれたのかと思いました。
温故知新、先輩方の良い所を受け継ぎ、それを自分なりに高めていく。
初めて私が日本橋の草月流展に作品を出品し、その直後、恩師が他界したあの時以来、今日まで、「よくここまで成長したね、頑張っているね」と、亡き恩師は今の私を誉めてくださるでしょうか。
伝統、文化、人、伝えること、つなぐ事、それは容易なことではないということを感じました。
今回は歴代の家元が収集された花器、著名な陶芸作家の想いの入っている器に、私達いけばな作家が花をいけさせて頂くのですから、私を始め出品者は緊張と喜びを感じながら楽しくいけられたのではないかと思います。
貴重な体験でした!この機会を与えて下さった家元に感謝しています。
それにしても陶芸作家の中村豊氏は、私の作品をどう思われたのでしょうか。
少々気になるところです。
草玉